2003年11月

Strand7 ver2.3.0 リリース決定

使いやすい日本語環境に加えてStrand7の新しいバージョン2.3.0がリリースされます。

備考:
  1. 以前のバージョンのStrand7で作られたモデルは、新バージョンのR2.3と互換性があります。新バージョンR2.3で作成され、保存されたモデルは、以前のバージョンのStrand7では開くことが出来ませんが、テキストの書出しオプションのよる互換性はあります。
  2. R2.3はR2.3専用のキーを必要とします。
  3. このページに掲載されているStrand7のイラストはすべて英語版のままですが、これらのインターフェースは日本語版ではすべて日本語になっております。

新書出し・読み込みオプション

新リンクタイプ

  • 2点リンク
    Strand6のユーザーの方はこの2点拘束のリンクタイプの基本形を覚えていらっしゃるかもしれません。この機能によって2つの節点の間に、一次方程式によって定義される自由度連結リンクを作成することが出来ます。


新荷重・自由度ケースオプション

1.荷重・自由度ケースダイアログボックスの更新
モデルの確認・検査の簡素化のためにグローバル荷重・自由度ケースダイアログボックスが変わりました。主荷重ケース(primary load case)には、重力、もしくは加速度の値が設定されているものだけを、ダイアログボックスに表示することが出来るオプションが出来ました。すなわち、モデルに適応された荷重ケースを確認する場合、慣性荷重が適応された荷重ケースを検査しやすくなりました。



2.新慣性解除自由度ケース
グローバル荷重・自由度ケースダイアログボックスにおいて、自由度ケースのタイプを選ぶオプションが増えました。以前からあった普通自由度ケースに加えて、慣性解除自由度ケースが利用可能になりました。慣性解除自由度ケースは、静荷重を持つ自由に浮かぶ構造物(船や飛行機など)を、なんら節点拘束を加えることなしに、線形静的解析ソルバーを用いて解くのに用いられます。自由体にかかる外力は、一定の加速度でそれを動かしますが、この外力の時間に伴う変化がないか少ない場合、慣性力は外力と均衡をとっているといえます。自由度ケースを慣性解除ケースに設定すれば、グローバル線形、角度加速度は自動的に適応され慣性力を作成し、ユーザーが設定した荷重とバランスを取ります。慣性解除ケースは、完全自由実体、もしくは対称自由物体(1/2もしくは1/4のモデルが完成している自由物体)において利用可能です。



3.等価震度荷重(準静的地震解析)

地震構造デザインコードのほとんどは(例:AS1170.4とEurocodes EC8)、完全なスペクトルまたは時刻暦応答解析の替わりに準静的解析を行うことによって建物の地震解析を簡単にするやり方を示しています。準静的解析は、地上からの高さによってかわる水平荷重としての建物の自重の合計の分布を含んでいます。水平荷重の分布や、適応は手計算ではかなり複雑で、時間のかかるものです。Strand7では、この荷重は単に必要な震度係数を入力するだけで自動的に適応されます。これらの震度荷重ケースは、主荷重ケースと同じように設定することが出来ます。すなわち、震度荷重ケースは、同じLSA(linear static solution)ファイルの中に、主荷重ケースと共に存在することが出来ます。これによって、主荷重ケースと震度ケースの組み合わせが、大変簡素化されます。



要素属性

  1. 梁要素分布力とモーメント
    分布パターンを選択することによって、梁要素(線要素)に、線形、三角形、台形などの形状の荷重力、モーメントを適応することが出来ます。最大64組までの分布荷重を、一つの梁要素にかけることが出来ます。



  2. 梁要素点力(点荷重)とモーメント
    最大64組までの点力(荷重)とモーメントを、一つの梁要素にかけることが出来ます。

  3. 新ストリンググループ
    連結したトラス要素は、グループ化することが出来るようになり、ストリンググループを形成することが出来るようになりました。ストリンググループは、摩擦のない滑車のベルトのような働きをします。滑車の機能は、それぞれの節点に存在し、それらは摩擦力を考慮しないため、張力は一つのストリンググループの内のトラス要素すべてにおいて再現されます。ストリンググループは、開放端、もしくは閉じられたループに使用することができます。  



    この属性は、複雑な非線形荷重の際に適応できます。次の図は簡単な例を示しています。ストリング(赤色で示されている)の一つの端は、平面のフレーム構造に接続され、仮想の一連の滑車(節点に存在する)を通り抜けさせられています。もう一方の端は、決まった拘束力で、下方に引っ張られています。一連の反応は、マルチビュースクリーンによって以下のように表示されています。



  4. ケーブル要素
    カテナリーケーブル要素の再分割が可能になりました。これはケーブルの一部に集中荷重を適応する際に使用できます。

  5. パイプ圧力・温度
    内部・外部パイプ圧力を、内部・外部パイプ温度の属性ダイアログボックスから指定できるようになりました。



  6. 新荷重パッチ
    R2.3.Xの主要な新しい機能の一つが荷重パッチです。荷重パッチは新しいタイプの面要素で、なんら属性やプロパティーを持ちません。梁で囲まれたエリア(荷重パッチ)にかかる力の梁への伝達のために使われます。たとえば、ビル側面の風荷重の伝達や、床スラブの活荷重の伝達に使用されます。荷重パッチはエリア荷重を線荷重に換算し、梁に伝えます。属性表示ダイアログボックスから面要素を荷重パッチとして指定することが出来ます。これによって、複雑に配列された梁への荷重適応がさらに簡素化されます。面要素への荷重を変えるだけで、その周りの梁への荷重も自動的に変化します。



    次の二つの例を見てください。両方とも梁の骨組みのモデルです。左側のモデルには、力は再分割されたメッシュとその周りの再分割された梁要素を通して荷重されています。右側のモデルには、たった一つの荷重パッチとその周りのたった一つの梁要素を通して荷重されています。両方の曲げモーメント図がほぼ一致しているの分かります。それにもかかわらず、右側の荷重パッチモデルは非常に簡単に作成することが出来、ポストプロセッシングも非常に簡素化されます。



    荷重パッチ属性は、荷重パッチとして指定された要素にのみ適応されます。属性表示ダイアログボックスでは、6種類の梁への荷重分布方法の中から選択できます。

          

    ユーザー定義分布荷重を除いては、周辺の梁要素にかかる総荷重は荷重パッチにかかる総荷重に匹敵します。荷重の伝達には、梁要素は必ずしもパッチの辺の全長をカバーする必要はありません。梁は、パッチの辺の全長より長くても、短くても、あるいは複数の梁要素で構成されていてもかまいません。



    荷重パッチ要素に適応出来る荷重は、面要素法線方向圧力、面要素グローバル圧力(投影あり、なし)、面要素せん断と面要素非構造質量です。

    さらに荷重パッチに関連する便利な機能が二つあります。

    まず、荷重パッチ作成ツールです。このツールによって、梁要素で成されるどんな多角形においても荷重パッチを定義することが出来ます。単にフレームなどの梁要素を選択するだけで、荷重パッチを作成することが出来ます。次の図は、これに関するいくつかの例です。




    次のツールは、荷重パッチを梁要素荷重に変換するツールです。ソルバーの起動の際に、荷重パッチの荷重は常に自動変換されるので、このツール解析の際には必要とされません。これはStrand7が、どのように荷重を梁要素に伝達したかを確認する際に、とても役立ちます。一つ重要なことは、一度荷重パッチが、梁荷重に変換されたのであれば、ソルバー起動の前に、パッチ荷重か梁荷重のどちらかを削除しなければなりません。さもなければ、荷重が二重に適応されることになります。

  7. 面要素の厚さ
    Strand7 2.3.Xにおいて、面要素の厚みを要素属性として適応できるようになりました。厚みのみが違う場合において、膜要素と曲げ厚さがこのように設定できるようになりました。



  8. 面・ソリッド要素グローバル圧力
    以前のStrand7においては、投影グローバル圧力が、面要素もしくは、ソリッド要素に適応される場合は、投影は




    次の図は、それぞれの違いを示しています。モデル図は、45度に傾斜した2つの面を示しています。それぞれの面は、X=1,Y=1のグローバル面圧力がかけられています。左側のプレートは、投影された合力として圧力が適応されています。すなわち、荷重はプレート面に沿って働いているため、 しかしながら、右側のプレートには、投影された分力として圧力が適応されています。すなわち、プレートにかかる圧力荷重は投影される面に直角、さらに水平に適応されます。それゆえ、この場合においては、拘束点において反応があります。

  9. ソリッド要素ローカル軸
    ソリッド要素にローカル座標を定義するため、 UCSが設定できるようになりました。この機能は、結果の抽出や、材料の設定の際に大変役立ちます。以前、このようなモデルは細かく分割し、材料軸をそれぞれの属性として設定しなければなりませんでした。現在、UCSをソリッド要素に適応できるようになったため、この作業は必要なくなりました。



    ソリッド要素のローカル軸は、面要素のローカル軸と同じように表示することが出来るようになりました。



  10. ソリッド要素初期圧力
    ソリッド要素に初期圧力を設定できるようになりました。



  11. 非構造質量
    R2.3.Xのもう一つの主要な新しい機能の一つが非構造質量です。名前からお分かりになるように、構造物の一部ではない質量です。この属性は、主にコンディションによって変化する活荷重、非構造的死荷重の適応に便利です。例えば、ビルディングなどに固定されていなし家具などは、重力荷重を建物のスラブに伝えますが、これを非構造的質量として設定することが出来ます。以前は、これは圧力として設定されていましたが、動的解析では、圧力は構造物の慣性力に影響力を及ぼしません。
    この非構造質量属性は荷重と自由度ケースのダイアログボックスにおいて、質量構造・非質量構造を含むか含まないかを設定できます。これによって、構造物のみの構造質量も考慮できるようになっています



    4タイプの非構造質量属性が、節点、梁要素、面要素、さらにソリッド要素において利用可能です。それらの適応方法については、以下の通りとなります。

    • 節点-集中質量として適応されます。



    • 梁要素-長さ単位ごとに質量を適応することが出来ます。質量の密度は、梁要素分布荷重と同様に、梁要素全体に均等に設定することも、または多様に分布するようにも設定可能です。



       
    • 面要素-単位面積ごとに一定の質量を適応できます。



    • ソリッド要素-すべての面の単位面積あたり一定の質量を適応できます。



      4タイプの属性はそれぞれ動的係数を適応するオプションがあります。静的解析においては、グローバル加速度が適応される場合非構造質量属性は重力荷重を生み出します。グローバル加速度が、適応されない場合には、解析結果にはなんら影響がありません。動的解析においては、非構造質量の大きさは動的係数を掛けることによって、構造物質量マトリクスに追加されるべき効果的な質量を計算します。
新ツール

  • 中間面作成
    このツールは、次の図が示すように、2つの面要素の間に中間面を作成するのに使用されます。この場合、赤色の面は、青色と緑色の投影中間面です。



  • 新改良ー面要素を滑らかにするツール
    このツールによって、面要素の縁を滑らかにするかしないかを設定できます。さらに、メッシュの滑らかさの質も以前のバージョンよりも改良されました。


新材料オプション

  • 複合材料ライブラリー
    複合材料のライブラリーの作成が、一般部品材料ライブラリーと梁要素ライブラリーにおいて可能になりました。


新ディスプレイオプション

  • 梁要素分布荷重ディスプレイ
    梁要素分布が、ベクトルとラインのどちらかでディスプレイ出来るようになりました。ラインオプションは、梁要素の力の分布荷重が三角形か、台形であるかなどを表示するのに役立ちます。


新テーブル(表)オプション

  • 応力ーひずみ関係図自動作成
    Strand7の応力ーひずみ関係図の等式エディターに、新機能、自動弾塑性応力ーひずみ関係図作成機能が加わりました。 3つのパラメーター、E0、降伏圧力、Et(the post-yield tangent modulus)を入力することによって、Strand7は簡単な応力とひずみ関係図を自動作成します。



  • 時刻暦応答をスペクトル応答に変換する
    Strand7において、加速度-時間テーブル(表)を加速度応答スペクトルに変換することが可能になりました。時刻暦応答解析の替わりに、もっと簡単なスペクトル解析をしたいときにこの機能は役立ちます。



    次の図は、この機能における例を示しています。一つ目の図は加速度と時間の関係図を示し、二つ目の図は、加速度応答スペクトルを示しています。




新ソルバーオプション

  • 調和応答解析ソルバーオプション
    調和ソルバーはユーザーに2つの結果タイプオプションを提供します。周波数に対しての解析か、時間に対しての解析かを選ぶことが出来ます。以前のバージョンでは、周波数に対しての解析のオプションしかありませんでしたが、荷重タイプに”作用荷重”を選択すれば、結果タイプを”vs 時間”に設定できます。”vs 時間" 解析オプションを選択すると、調和ソルバーの範囲オプションは無効となります。



    替わりに、荷重ケースをクリックすれば、荷重係数、フレーズと周波数を入力することが出来ます。すなわち、異なる荷重ケースは異なる周波数において適応されますが、すべては、同時に構造物に適応されます。



    ポストプロセッシングの際、2つの異なるモードから選択できる結果は、



    調和時間暦は、それぞれの周波数とフレーズにおいて、すべての荷重一緒に働く タイムステップの数や、ステップのサイズは、ユーザー入力によって決定されます。


新結果オプション

  • 複合範囲設定
    複合範囲設定において新しいオプション、複合範囲設定セットが、利用可能となりました。以前は、複合範囲設定においては以下の3つのオプションがありました。
    1. ON-常にこの荷重ケースを考慮する。
    2. OFF-常にこの荷重ケースは考慮しない。
    3. CHECK-累積的な結果を悪くする場合においてのみ、この荷重ケースを考慮する。

    選択されたコンビネーション範囲タイプに応じて、


    一つのセットの中には一つ荷重ケースのみが考慮されます。一つのセットの中の2つの荷重ケースは同時には起動しません。以下の条件を満たす場合においてのみ、設定された一つのセットにおいて、一つだけの荷重ケースを加えることが出来ます。

    1. コンビネーション最小範囲ー定義されたセットにおいて荷重ケース見つける



バージョンR2.2からリリースされたStrand7のAPIは、多くのユーザーに広く利用され、数多くのアプリケーションや、ツールがStrand7のユーザーによって開発されました。Strand7の新バージョンR2.3においては、60以上の新しい機能がAPIに付け加えられました。新しく追加された機能としては、
  1. 非線形荷重増分を管理する
  2. 再起動ファイルを管理する
  3. 他の結果タイプを抽出する
  4. 新しいバージョンで利用可能な新しい属性タイプを適応する